Wulfinghoff社訪問記3

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さらに次の質問。

育種家心理として、私にとってはこれが一番訊いてみたかったことでした。

『既に販売終了になっているのは知っていますが、ひょっとしてファンタジーを保存したりはしていらっしゃらないでしょうか?』

『いや、ないよ。』

『育種用の材料として残してあったりは?』

『ないない。』

『そうですか・・・。じゃあ、ファンタジーを交配に使ってできた品種とかはありませんか? ファンタジーの血を引いた品種という意味です。』

『それもたぶんないと思うよ。ファンタジーは育種の親にするには良い性質を持っていなかったからね。ちょっと待って、念のためにうちのブリーダーに電話で確認してあげるから。』

オフィスからは車で20分ぐらい離れたところにあるという温室にいるブリーダーとしばし話した後で、彼ははっきりこう言ったのです。

『やっぱりそうだった。病気に弱かったし花も小さかったので、交配親としては有望じゃなかったんだそうだ。』

『でも、ファンタジーは当時一世を風靡した名花だったんですから、まったく交配しなかったってことはないんじゃないんでしょうか?』

私もプロのブリーダーですし、ブリーダーの気持ちは良く分かります。まだ納得がいかなかったので、なおもこう食い下がりました。

『じつはね。さっきのブリーダーはその当時いたブリーダーじゃないんだよ。その人が辞めた後にうち来たブリーダーなんだ。だから前任者が何を交配したかは良く分からないんだけど、たぶん同じように交配には使わなかったんじゃないかということなんだ。』

『そうですか・・・。』

残念ながら私の友人からの事前情報が裏付けられてしまいした。交配したくても稔性がとても低かった(種子ができ難かった)と他の育種会社のブリーダーが話していたぐらいですし、ファンタジーの血を引いた子孫がこの世に存在している可能性は極めて低そうです。

当時のことを良く知る人物が、お父様に続いてブリーダーまでいないとは! この時ばかりは、時の経つ速さ、物事が風化する速さに驚きを禁じえませんでした。何事もそうですが、後世に何かを伝えるということはとても大変なことですね。

<つづく>

キリンアグリバイオ? 竹下大学

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コメント(6)

真吾様・竹下様
訪問記2にコメントして、戻ったら「訪問記3」が・・ラッキー!

プロの育種家さんの、核心に迫る様子が・・・一気に読み、そうなんだ?!!時の流れがね?。
でも、・・つづく・・ですね。

竹下大学さま

まだ、つづきがあるんですね。。。
もう、たまりません!

ほんと、こんなドキュメンタリー他にないわ。
ドキドキドキドキ。

じゃ、じゃぁっ、
子孫が現存する可能性が低いということですが、
『ファンタジー』を生んだ親が必ずいるはず!

あと、同じ親から、兄弟も生まれているはず!

あぁ、どうしよう。。。限りない旅だ?。
でも、ひとまず深呼吸。
 “つづき” をお待ちしています☆

今まで簡単に、フリージアとか、ファンタジーとか気安く呼んでたけど
とても弱い体でありながらも
いろんな人によって、もちろんファンタジー自体が遠い昔
頑張って、頑張って、それに遠い日本の、山下夫婦までも魅了してた・・・
頑張りきって、精根尽くしてたとしたら
そっとしておきたくもなったな・・・

でも、考えれば
その昔、一世を風靡してた花がたくさんあり
しかし、現代では名前すら消えてしまってる花というのは数知れずなんだろう

それを考えると、ファンタジーは幸せですね

ごめんなさい・・・
まだ可能性がありますもんね

竹下刑事、育種家というのは
新しい品種を作り上げるだけでなく

未来につなげてく
歴史を残していく
そして、語り継がれる

とても重要かつ神秘的な職業ですね?
まいったなこりゃ・・・
にくいっす!

前から気になっていることが...。

インデージョーンズのように宝物は持ち出すとダメになっちゃうみたいな...(・_・;)

幻の花がみんなが知っていたら幻じゃなくなってしまうんじゃないかとか。

みつかってほしいような、でもいいのかな...と気持ちがゆれてます。


もう今までにたくさんのパワーをもらっているのに、ファンタジーはどう思っているのかな?

もう1回必要なら出てきてくれるんでしょうね!

ファンジスタの皆様

温かいコメントをありがとうございます。こうしてこのブログで、柳生さんに宛てた自分の手紙を見ると、自分が書いたのではないようなちょっと不思議な感覚になります。

一点だけ、念のために補足させていただけますでしょうか。

ファンタジーは花が小さかったと言われてしまいましたが、発売された頃は確かに大輪だったのです。これは間違いありません。しかし、Wulfinghoff社が育種をしようとした時には、既にもっと大輪の交配親として優れているであろう別の品種が存在した、という意味です。

竹下大学様
育種家は凄いお仕事だと思っています。新しい品種を市場に出すまでには、長い年月が掛かっているでしょうが、それも・・・より優れた品種を・・・より早く・・・時間との戦いでもあるのでしょうか?
ファンタジーとは、関係ありませんが、シャコバサボテンの交配・種まきをして、育てていますが、花を咲かせる事の難しさを感じています。

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